
実に気楽なものだ…と、心の中でいた。
長の道中で疲れ切り、睡魔もあったが、濃姫は何故か眠れなかった。
あの悪夢のように何が事が起きるのではないかと考えると、どうしても安眠など出来なかった。
しかし何かあれば、外に控えている小姓や侍女たちが知らせてくれるであろうし、
夢のように出火したとしても、庭先へ下りて道なりに行けば、すぐに門前へ出られる。
命の危機を回避することは、それほど難しいことではないだろう。虛擬辦公室及註冊地址| 節省租金提升形象| easyCorp公司易
大丈夫、きっと大丈夫…。
気付けば濃姫は、懸命に上へ吊り上げていた目蓋を、ひたすら下がるままにしていた。
「──御台様、ご起床の刻限にございます。お目覚めになって下さいませ」
布団の足元からの声が響き、濃姫は、はっと双眼を見開いた。けたように上半身を素早く起こすと、足元に控えていた古沍が両手をつかえて、ゆったりと一礼する。
「お目覚め、おめでとう存じます」
「…今、じゃ?」
「六つ半(朝7時頃)にございます」
それを聞いて濃姫は、慌ててらに目を見やった。
既に、隣で寝ていた夫の姿はない。
「上様は?」
「明け方にはご起床になられ、既に茶会の仕度に取りかかっておりまする」
「…左様か…」
濃姫は深く息を吐き、うずくまるようにして上半身を前方に曲げると、
すぐに体勢を戻して立ち上がり、古沍の横を通って、部屋の前の廊下に出た。
雨戸と障子が開け放たれたの向こうに、美しい山水の庭と、穏やかな青空が見える。
澄んだ空気が心地好い、実に爽やかな朝だった。
何事も行っていないことを確認した濃姫の顔に、安堵の笑みが浮かんだ。
良かった──。
どうかこのまま、あの悪夢も、私の懸念も、ただの笑い話に変えておくれ。
濃姫は肩で息を吐きながら、強く天に向かって祈った。
「実に良き天候にございましょう?」
古沍はいながら、濃姫の背に歩み寄った。
「せっかくの御茶会が悪天候では、おでになられる客人方も難儀致しますものね。本日は、妙覚寺に入られた信忠のも参られます故」
ああ、そうであったと、濃姫は軽く双眼を見開いて、背後の古沍に視線を向けた。
「信忠殿はこの京で、おであられた松姫殿とお会いする運びとなっておる」
きっと胸躍らせていることであろうと、濃姫は母の顔になって言った。
「松姫様はいつこちらへお越しに?」
「さぁ…、お会いになられることは聞いておったが、いつなのであろうのう?」
「では信忠様が参られた時においあそばされませ。ちょうど良い話の種にございます」
「そうじゃな」
濃姫はらかな微笑を浮かべると、ふいに安土城のある方角にを向けて
「……胡蝶は、大丈夫であろうか?」
と、どこか神妙な面持ちで呟いた。
「何かあればお菜津殿より知らせが参りましょう。それに安土の城には大方様もいらっしゃるのですから」
古沍は濃姫のらに立ち、勇気付けるように言った。
「…そうか…。そうじゃな。胡蝶は一人ではないのじゃからな」
左様にございますと、古沍は深く首を前に振る。
「それよりも、早よう朝のお支度をなされませ。あまりのんびりしていては、信忠様がこちらへお着きになられまする」
「おお──そうであったな。せめて着替えくらいは済ませておかねばな」っている寝衣の元に触れながら、濃姫は早足に室内へ入って行った。
その頃蘭丸は、きょろきょろと辺りを見回しながら、寺の廊下をただしく駆けていた。
やがて中庭をんだ反対側の廊下に、弟の力丸の姿を認めると
「力丸! ──待て、待つのだ!」
走りながら、前方を行く弟を呼び止めた。
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