感はあった。
濃姫も改めて室内を見渡すと
「私も、夢が現実に結び付くとは考えてはおらぬ。初めは不安しかなかったが、それでも私がここへ参ったのは、
あの悪夢が、本当にただの夢であったことを証明する為でもある。全てがであったと、笑んで安土の城へ戻れるようにな」
そう言って、暗い表情の上に無理やり笑顔を貼り付けた。
「されど、用心するに越したことはない。明日の茶会の席に、上様のお命を狙う不審のが紛れ込まぬとも限らぬ」
とにもかくにも気を引き締めてかからねばと、濃姫は気丈な態度で言った。
すると外の廊下から人が駆けて来る足音が聞こえ、それと同時に 【植髮前後大不同?】談植髮成功率與植髮心得 -
「御台様ー!御台様はいずこにおわしまするかー!?」
聞き慣れた若人の声が響いてきた。
やがて開けたままの扉の向こうに、小姓の坊丸の姿が現れた。
「御台様、こちらでございましたか…」
ほっと胸を撫で下ろすような声色でくと、坊丸は二を足早に進み、
濃姫たちがいる部屋のとっつきに、片膝をつくようにして控えた。
「なされました?坊丸殿」れながら申し上げます。の場に御台様をお呼びするようにとの、
上様からのせにございます。どうぞ六つ半になりましたら、西の書院におで下さいますよう」
頭を下げる坊丸を見下ろしながら、濃姫はゆっくりと首を縦に振った。
「相分かった。参りますと、お伝え下され」
夜六つ半刻(午後7時頃)。
濃姫は、本能寺での信長のとなっていた西の書院で、珍しく向かい合って、夫婦で食事をとった。
いつもは上座の中央に信長がいて、濃姫はその右脇に一歩引くような形で控えていることが多く、
食事の時にお互いの顔が正面にあることなど、信長が天下に名をかせるようになってからは久しくないことだった。
故に濃姫は、汁物をすすりながら、上目遣いで正面の夫の顔を見た時、思わず「ふふっ」と笑ってしまった。
「何じゃ?何がおかしい」
信長は箸を止め、軽く口端に笑みを作った。
「いえ…、実に久しいことだと思いまして。こうして上様と相対してを頂くなど」
「たまには良いであろう。ここは安土の城ではない故、いちいち立場を気にする必要もないからな」
信長は言いながら、酢の物に箸をつけた。
「そうですね。何せ上様が四十九、私が四十八。世間的に見れば、子育てを終え、
互いに楽隠居に入らねばならぬですから。夫婦の時間が増えるのも道理というものです」
「楽隠居のう…。儂には縁遠い話しよ」
信長は他人事のように笑った。
信忠に家督を譲っても尚、織田家の実権を握り続け、国内のみならず世界をも見据えている信長には
自分がまったりと隠居生活を送っている姿など、想像もつかない様子であった。
「時に、お濃」
「はい」
「明日の茶会じゃが、そなたは出んでも良いぞ」
焚き物に伸ばしかけていた箸を止め、濃姫は眉をひそめて信長を見やった。
「は何故にございましょう?公家衆のお相手をせよと申したのは、上様では…」
「そなたは名目上、正室ではなく侍女の一人として参っておるのだ。表には出ぬ方が良いであろう」
信長は相手の言葉をるように言うと
「それに──本当は人前へは出たくないのであろう?」
「…え」
「儂に付いて京まで参ったのは、例の不吉な夢ばかりのせいでは、ないのではないか?」
信長は器を下に置き、眼光鋭く
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