信長は見兼ねたように、素足のまま前庭に下りると
「左様なへっぴり腰ではならぬ!もっと両足を広げて、ドンッと構えてみよ」
濃姫の後ろに立ち、彼女の両腕を取った。
「目は真っ直ぐ前を見据えて…、【生髮】激光生髮儀如何使用?真的有效嗎? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: やや体重を後ろに…、柄をしっかり握ったまま少し引いて…、そのまま槍の如く思いっきり…突き出す!」
薙刀の刃先が真っ直ぐ綺麗に宙を突いた。
「そして斬る時は…、大きく振り上げ…右上から左下と…、相手目掛けて…、一気に振り下ろす!」
ヒュンッ!
と、風を切るような気持ちの良い音が響き、濃姫は思わず笑顔になる。
「闇雲に振り回しておるだけでは駄目じゃ。構える時の体勢や、振り下ろす時の力の加減も考えねばな」
「は…はい、殿!何だか私、今のでコツを掴んだような──」
濃姫が笑顔で振り返ると、唇と唇がくっ付きそうなくらい近くに信長の顔があった。
「─!」
ハッと息を呑むなり、姫は慌てて顔を背けた。
「何じゃ、如何した?」
「……」
信長は暫し怪訝そうにしていたが、濃姫の顔が赤く染まっているのを見て
「ば、馬鹿っ…こ、これしきの事で…!」
事情を察したのか、どこか照れ臭そうな表情をして、あさっての方向に視線をやった。
何とも初々しい夫婦の姿を、三保野たちが微笑ましく見つめていると
「殿ー!殿はおられまするかー!」
廊下の奥から、佐渡守・林秀貞が背後に数名の家臣を従えてやって来た。
「…殿!こちらにおいででしたか」
「さ、佐渡か!何じゃ、そちが奥まで参るとは珍しいな」
信長は照れを隠すように、素早く縁の方へ駆け寄った。
秀貞は信長の前に膝を折ると
「畏れながら申し上げます!先程、火急の知らせが入り、安祥(あんじょう)城の信広様が、今川勢に捕らえられた由にございます!」
「何…、兄者が」
信長は軽く目を見張った。
織田信広は、信長の父・信秀の長男であり、事実上信長は信広の弟にあたる。
しかし信広の母の立場が、信秀の側室であった為、当時の習いにより、
嫡男の座は正室の子である信長に与えられ、信広は織田家の長男でありながらも、日陰の存在であった。
そんな信広が、三河側の今川・松平の連合と、そこへ侵攻せんとする織田との間で生じていた戦闘、
その中でも西三河南部の領有を巡って争われた「第三次(四次とも)安城合戦」において、惜しくも敗れ、今川氏の捕虜(ほりょ)になったというのである。
「あちらへは、平手の爺を将とする援軍を送っていたはずであろう?」
「はい。されど、今川・松平軍の猛攻を前に、平手殿も為す術なく」
「……これで、三河は完全に今川の手に落ちたという訳か」
信長の口から重い溜め息が漏れた。
「それで、兄上の身柄は今後どうなる?」
「畏れながら、今川は人質の交換を要求しております」
「交換?」
「即ち信広様と、先に人質として織田家へ連れて参られた松平竹千代殿との交換にございます」
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