「そう言うものですか?」
「私はこれで満足している。だからいいの。まぁ願わくば,京の時のように二人で暮らして独占欲したいものだがね。」
「どこかに二人で暮らす所を借りますか?私は荒屋で構いませんし。」
すると桂はとんでもないと首を激しく横に振った。
「荒屋は絶対に駄目。ただでさえ家を空けることが多いのにそんな所に君を一人になんて……。あぁ九一が来るか……。」
二人きりになれるからよろしくやるんだろうと拗ねてしまった。それを見た三津はきょとんとしたが,じわじわ笑いが込み上げてきた。
「久しぶりに小五郎さんの拗ねてる顔を見ました。相変わらず可愛いですね。」
「三津に可愛いと言われるのは複雑だな。」 【生髮】激光生髮儀如何使用?真的有效嗎? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
ツンとそっぽを向いたのを三津はにやけた顔で見ていた。アヤメと子供っぽい桂が可愛いと話していたのを思い出して懐かしくなった。
「仕方ないです。そう思うんですから。そんな可愛い所に心掴まれてしまうので仕方ないです。」
その言葉にそっぽを向いたまま目線だけが三津の方を向いた。
「心を掴まれる?」
「はい,確かこの話前にもしましたよ?子供っぽい男は嫌い?って聞かれた事あったと思います。どちらかと言うと可愛くて好きです。」
それを聞いて桂の表情がわかり易く緩んだ。
「でも年上の夫に可愛いなんて失礼ですよね。」
「いや,君がそこに愛情をもっているのなら喜んで受け入れる。私は可愛い。」
「ふっ!ふっははっ!小っ小五郎さんが自分で可愛いって言ってる!ふふっ!かっかわいっ!!」
涙を浮かべて笑い転げる三津に桂は顔を真っ赤にした。
「そんなに笑わなくても……。」
三津はすみませんと涙を拭いとった。
こんなに三津が笑うのは久しぶりで,桂は感無量だった。
「沢山笑ったし今日はもう休もう。いい夢が見られるよ。」
そう言って自分の布団に引きずり込んだ。もう少し昔を懐かしもうかとにやりと笑った。「今日は帰らんけぇ夕餉は要らんわ。」
そう言って高杉は朝からおうのの家へ行く。第二次長州征伐で実質勝利を納めてから,高杉はおうのと過ごす時間が増えた。
「はーい。明日の朝餉も無しですね。」
そんなやり取りをして三津は高杉を送り出す。屯所に居ても高杉は食事の量が減った。きっとおうのの所で沢山食べてるんだろう。だから気にも留めてなかった。
それよりも,おうのとはどんな女性なのかが気になっていた。
「高杉の愛人?あー,ぼけーっとした女やなぁ。」
「それ悪口?」
三津は聞く相手を間違えたなとじっとり山縣を睨んだ。
「有朋ぽけーっとしたの間違いやろ。」
『九一さんまでそう言うの?』
まさか二人共からそんな言葉を聞くとは思わなかった。
「おっとりした人なんよ。高杉さんの気性が荒いのと正反対やない?」
セツが口を挟んでくれたお陰で三津は少しおうの像が掴めた。
「嫁ちゃん何でそんなん気になるん。」
「いやぁ高杉さんが気に入る人ってどんな人なんかなぁって。」
本妻の事も知らないから全く想像がつかないのだ。ただの興味本位だ。
「今度紹介してもらえば?」
入江が呑気に笑った。もしかしたら気が合って友達になれるかもよなんて言う。
愛人と友達になったら本妻とはどう接すればいいのよとわかり易く顔を引き攣らせた。
まぁ本妻とも関わる事はないとは思うが。
「嫁ちゃんはおうのさんに入江を愛人として紹介せんにゃいけんなぁ。」
にやにや笑う山縣に三津は吉田を取り出した。そこは触れないで欲しい部分だ。
「あのぉ……。」
四人の井戸端会議にもう一人の声が加わった。
「おー噂をすれば。おうのさんどしたん。」
山縣が久しぶりと気軽に片手を上げて挨拶をした。まさかここで本人が登場するとは思わずに三津は面食らった。
「噂?私ですか?私に関して面白い話なんてないですよ?」
どんな噂ですか?と首を傾げる仕草に三津はなるほど可愛いと思った。
「高杉さんには勿体無いぐらい可愛いですね。」
「おうのさんも元芸妓やけぇ。晋作が惚れて身請けたそっちゃ。」
入江の補足に道理で可愛い訳だと納得した。するとおうのの視線がじーっと三津に突き刺さった。
「初めまして……ですよね?」
おうのは右に傾げていた首を今度は左へ傾けた。
「あっはいっ!三津と申します!いやっ松子?」
三津はどっちで名乗ればいいの?と混乱して入江達の顔を見回した。
するとおうのがぽんっと手を打った。
「あなたが歩く問題児!」
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