
「お三津ちゃん入るね。」
白石がそっと戸を開くと泣き疲れて壁にもたれかかりぐったりする三津が居た。
「三津っ!」
「九一さん?何で……。」 https://www.easycorp.com.hk/zh/virtual-office
泣き腫らした虚ろな目がこちらを向いた。入江は泣きたくなるぐらい胸が締め付けられた。こんな三津にしてしまった桂が憎かった。
「ごめん……様子がおかしかったんに気付いてやれんくてごめん……。」
入江は部屋に踏み込むなり三津の手首を掴んで自分の腕の中に閉じ込めた。
「三津教えて?何があったん……。ゆっくりでいいけぇ話して?話を聞かんと助けてあげられん……お願い。」
しゃくりあげる小さな背中を優しく擦った。
「あんまり……覚えてへん……。私がわがまま言ったんかもしれへん。それで呆れたんかもしれへん……。苦しめるなら終わりにするから自由に生きろって……。」
最後の言葉だけが鮮明だった。
終わりにしようと告げられた部分だけがしっかりと脳内で蘇る。
「木戸さんが謝りに来ちょる。昨日のは本心やないんよ今ならまだ……。」
間に合うと言う前に三津は無理と声を荒げた。
「もうアカンの……。やり直してもまた同じ事繰り返すだけ……。全然気持ちが交わらへんの……。
私は何があっても離れへんって覚悟決めたのに小五郎さんはそれを受け容れてくれへんかった……。
戻ってまたこんな思いするの嫌や……。」
自分に縋りついてわんわん泣く三津に何の慰めの言葉も言ってやれなかった。
「……三津萩に行こうとしたん?文ちゃんとこ行きたい?」
三津は何度も頷いた。全部捨ててやり直したいとぼたぼた涙を溢した。桂との思い出も何もかも白紙にしたい。
「分かった。三津は萩で暮らしたらいい。文ちゃんもフサちゃんも喜ぶわ。」
「ちょうどね私の知人の商人が萩へ商いに行く予定がある。それに同行させてもらって萩に行くかい?」
三津は二人の言葉にボロボロの顔で何度も頷いた。白石は知人に頼みに行くとすぐに走ってくれた。
入江は三津の肩を抱き自分の肩にもたれさせて日が落ちるまで寄り添った。入江が屯所に戻った時には桂はもう居なかった。高杉と幾松に聞けば付き人が迎えに来たらしい。
「じゃあ三津さん今は白石さんとこか。良かった……海に身投げしちょらんか心配やったそ。」
赤禰が大きく息を吐いた。どこにも見当たらなくて本当に生きた心地がしなかったとみんな口々に言った。
「生きとるけど死人みたいやった……。別れを告げられたんがかなり衝撃やったからか混乱してそこ以外ほとんど憶えとらんそ。
三津は自分がわがまま言ったんかもしれんとだけ……。」
「何でこんなすれ違うんよこの二人は……。今回はやっぱりアカンのやろか……。」
幾松はちゃんと話し合うべきよと言うがそれが出来る状態にないと入江が説明した。あとは向こうに帰ってその目で確認してくれと。
「いい方向に向かわせたいと思ったけど三津がだいぶ憔悴しきっとるけぇ正気に戻るまでは何とも……。」
こんな思いするのは嫌だと泣いていた三津を思い出すと胸が痛んだ。
幾松が白石邸に戻ると白石が一室の前で右往左往している。
「白石はん私入ってもええ?お三津ちゃん私。入るで?」
幾松がそっと中を覗くと壁に持たれて遠くを見つめる三津が居た。
「もしかして何も飲まず食わず?泣いたなら水くらい飲み。白石はんお茶!」
幾松の指示に白石は急いでお茶を用意した。
「入江はんに聞いた?あの人謝りに来てたの。」
三津は湯呑みを両手で持ってこくりと頷いた。
「ホンマは別れたくないんよ?あの人。ただの喧嘩の売り言葉に買い言葉で別れる別れへんって言い合う恋仲多いんやで?」
だから意地なんか張らずに仲直りしなさいよと言うが三津は焦点の合わない目で遠くを見ている。
「ごめん……今そんなん考えられんわな。でも水分取って何か口に入れて。お願い。」
近期熱門活動... |