｢私も小五郎さんに出逢うまでは中身

｢私も小五郎さんに出逢うまでは中身空っぽやったんですよ。今の中身くれたの小五郎さんやから私もホンマは小五郎さんがいないと駄目なんです。｣あれだけ騒ぎにして恥ずかしいが結局自分も元に戻るしかないんだと頬を掻いた。｢姉上が空っぽなんて想像がつきません。｣フサが真ん丸な目を三津にまっすぐ向けた。目元が吉田に似ているからその目に見つめられると変な感じがするなと三津は笑った。それから境内で行われてる奇兵隊の訓練をお寺の石段に座って眺めながら話の続きをした。【生髮】激光生髮儀如何使用？真的有效嗎？ @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: ｢小五郎さんに出逢う前に私には恋仲がおったんですけど辻斬りに遭って亡くしたんです。｣｢それ三津さんも斬られて死にかけたって言う？｣｢そうです！あれ？この話しました？｣それとも桂か入江から聞いた？と三津は不思議そうに文を眺めたが文も全く同じ様な顔で三津を見返す。｢覚えとらんそ？坂本さんと飲んだ時に何回も死にかけた話しちょったんやけど。｣｢おぉ……覚えちょらんです……。｣｢新ちゃんって方は姉上の恋仲の方だったのですね。誰かは気になっておりました。｣フサもしっかり新平の名前を覚えていた。間違いなく話したようだ。三津はやっぱりお酒怖いと白目をむいた。｢なるほどねぇ。桂様がその傷癒して恋に落ちたと。｣｢恋に落ちた瞬間は全く分からないです。気付いたらよく小五郎さんの事考えるようになってて。それでも小五郎さんから想いを伝えられた時は嘘や騙されてるって疑いましたね。あんな人がこんな町娘相手にするなんて思わないやないですか。幾松さんもおったし。｣｢そりゃ疑うわ。｣私でも遊ばれてると思うと文は頷いた。｢私はお三津ちゃんの話聞かされてた側やからどれだけあの人がお三津ちゃんに本気か知ってるけどね〜。｣そこへ幾松もやって来て雑談の輪に加わった。｢どんな話されてたか聞くの怖いんですけど……。｣｢怖いも何も惚気話よ。会いたいと思ってたら偶然会えたやの，今日はお寺で子供と楽しそうに遊んでたやの。一度吉田はんが着飾ったお三津ちゃん連れてたのに遭遇したって動揺してはったわ。私の座敷の時ぐらいお三津ちゃん忘れてくれへん？ってぐらいお三津ちゃんの話ばっか。せやから気になって会いに行ったら吉田はんも来てたんよ。その時はお兄さんにみたらしご馳走になったのよ。｣幾松はフサに気前のいいお兄さんだったわよとにっこり笑った。｢吉田はんも健気よ？毎回みたらし食べて。｣三津はそれの何が健気なの？と首を傾げた。幾松からみたらしが健気な理由を聞く前に三津はフサに甘味屋に居候して働いてた事を説明した。そこに吉田が客として三日と空けずに通っていたと。吉田が甘味屋に通っていると聞いただけで文とフサはにやけた。｢お三津ちゃんお店で一番好きなんみたらしって言ったやろ？｣三津はそれが何か？とまだ首を傾げていたが文とフサは気付いたらしく“あー”と声を上げ，フサは兄のそんな一面を可愛いと微笑んだ。｢吉田さんもそんな遠回しな表現せんでもええのに。三津さん，吉田さんは三津さんの好物を食べるので気を引こうとしてたんやと思うそ。｣｢えっ分かりにくっ！｣｢兄上は自分から想いを伝えるのが苦手でしたので姉上の好きな物を自分も好きだと主張する事で仲を深めるきっかけにしたかったのかもしれません。｣｢しっかり言葉にしたかて伝わらへんお三津ちゃんに遠回しなんて通用せえへんのにねぇ。｣幾松はふんと鼻で笑った。｢ごもっともです……。ホンマに……吉田さんとはもっとちゃんと向き合ってたら良かった……。吉田さんが最期に私にくれた言葉ね来世で一緒になろう。愛してる。やったんです。そこまで言うてくれる人やったのに想いを無碍にし過ぎてました。｣三津はホンマに駄目な女ですねぇと笑いながら目に涙を滲ませた。｢姉上，初めて私に会った時笑った顔がそっくりと泣かれましたよね？最期に見せた顔とそっくりと。あの時私が見せたのと同じ顔で兄上はそう告げたのですか？｣三津は涙が止まらなくなって両手で顔を覆っていれば頷いた。