が、寝ている将軍の

が、寝ている将軍の頭部に突き刺さる。　三人そろって を抜く。

「ちっ」

　刺客から、たしかに舌打ちがきこえた。肺癌病徵 そして、息を呑むのも、感じられた。

　おれたちも、同様に息を呑む。

　ちいさな庭へとつづく障子。その天井の隅に、白い寝間着姿の俊冬がはりついているのである。

　あらゆる創作にでてくる忍びみたいに。

「沢村さん、あんたが侵入し、灯明皿を割って座布団を突き刺すまでに、わたしは二度、あんたを殺ることができたぞ」

　天井から、俊冬が告げる。

　すげー、リアル忍びだ。　刹那、侵入者、つまり、沢村が逃げだす。退路は、庭のほうでなく、こちら側。これは想定内である。俊冬より、数がおおくてもこちらのほうがやりすごせる。そう判断したのだ。

　俊冬にはかなわぬ、といういさぎよさも含め、その判断力は称讃に値する。

　って、おれに褒められたところで、沢村が喜ぶとは思えないが。

　こちらに向かってくる沢村。一瞬のことであるが、頭巾の下の がみえた。それは、このまえ会ったときの好々爺とした老人のものではない。目尻の皺からもうすこし若いようであるが、「人生に悲嘆してます」って哀愁感がある。

　があう。向こうも、おれを認めたであろう。は、構えているだけで振るわない。ってか、振るう間もなく、沢村はおれたちの間をすり抜け、廊下へと飛びだしてしまった。

　それを、追う。

「あんたもこい」

　副長が、いまだ隅っこで座ったままの隊士の腕をつかみ、ひきずるようにして連れだす。は、構えているだけで振るわない。ってか、振るう間もなく、沢村はおれたちの間をすり抜け、廊下へと飛びだしてしまった。

　それを、追う。

「あんたもこい」

　副長が、いまだ隅っこで座ったままの隊士の腕をつかみ、ひきずるようにして連れだす。　外にでると、襲撃者たちは、永倉たちによって追い詰められ、取り囲まれている。

　いままさに、沢村が杜のなかに逃げ込もうとするその足許に、なにかが突き刺さった。急停止する沢村。

　沢村はあきらめたのか、ゆっくりとこちらへ振りかえる。

　忍び装束。背は、わざと伸ばさず猫背に。脚は、肩幅程度にひらいている。腰をわずかに落とし、腕は体よりはなしている。

　すぐにつぎへの行動へ移る。そういう構えである。

　これが漫画だったら、袖のなかに棒手裏剣かなにかを忍ばせているはず。そのために、それをいつでも投げられるよう、指先にまで集中しているはず。

　アラフィフ、というところか。最後の忍びとして、どのような人生を送ってきたのだろう。鍛錬につぐ鍛錬。忍びとして活躍する予定もないまま、どんな思いで鍛錬を重ねてきたのか・・・。の井戸に毒を投げ入れれば、将軍だけでなく、おれたちも殺れる。

　もっとも、その場合、関係のない者にも類が及ぶが・・・。

　ならば、厨に潜入し、食物に盛るという もある。

　なにゆえ、そういう をとらなかったのか・・・。

　不可思議このうえない。「その脚下の手裏剣は、上様のもの。上様は、手裏剣術の皆伝であらせられる。わたしが影武者をつとめずとも、あんたは手裏剣で を落としていたであろう」

　俊冬は、篝火のなか沢村に歩をすすめる。白い寝間着が、これでもかというほど炎の色に映えている。

　手裏剣で忍びが倒せるとは思えない。が、俊冬は、将軍が無力ではないということを、沢村もふくめ にもしらしめたいのだ。

「こいつら、殺ってもいいか？将軍を殺ろうって不届き者だ。生かして返す理由などなかろう？」

　さすがである。超絶ミラクルにＫＹな大石が、自称「新撰組の人斬り」として意見を叩きつけてくる。

「おまえは、だまってろ」

「やかましいっ」

「おまえは、口ばっかりでなにもやってないだろう」

「そうだそうだ。戦意のなくなった者しか、相手にせん」

　途端に、隊士たちがディスる。

　敵意、害意、殺意の矛先が、敵でなく